ねじの基礎(目次)
1 ねじの種類
1.1 おねじとめねじ
ねじには「おねじ」と「めねじ」があります。
おねじは円筒面にらせん状のねじ山を設けたねじ(ボルト等)、めねじは穴の内面にねじ山を設けたねじ(ナット等)です。
おねじ
めねじ
1.2 ねじの向き(勝手)
ねじが切られている向き違いで「右ねじ」「左ねじ」があります。
ねじの多くは右ねじです。
左ねじは、バイトホルダの部品等に使われる左右ねじ等に使われます。
左右ねじの例
2 ねじの基本寸法と用語
2.1 ねじの形状
ねじの形状や寸法の規定する規格が存在します。下記が代表的なねじ規格です。
代表的なねじ規格
- 国際規格:ISO規格
- 国別規格:ASME/ANSI規格,BS規格,DIN規格,GOST規格,JIS規格.他
- 業界別規格:API規格,MILITARY SPECIFICATION,他
- ユーザが独自に定めた規格
2.1.1 ねじ形状での大別
三角平行ねじ
【代表的なねじ規格】
- M:メートルねじ(ISO)
- UN:ユニファイねじ
- BSW:ウィットウォースねじ
- G:管用平行ねじ
三角テーパねじ
【代表的なねじ規格】
- R(PT ※旧JIS表記):管用テーパねじ
- NPT:アメリカ管用テーパねじ
- NPTF:アメリカドライシール管用テーパねじ
- API規格:ラウンドねじ
台形ねじ
【代表的なねじ規格】
- TR:メートル台形ねじ
- ACME:アクメねじ
のこ刃ねじ
【代表的なねじ規格】
平行ねじ
- BUTT:アメリカンバットレスねじ
テーパーねじ
- API規格のバットレスねじ
- 石油・ガス掘削用プレミアムねじ
その他
【代表的なねじ規格】
- ボールねじ
- 医療用インプラントねじ
- 等
2.1.2 山角での大別
山角=60°
山角=55°
G:管用平行ねじ
R:管用テーパねじ
BSW:ウィットウォースねじ
山角=30°
2.3 基準寸法(呼び径)
主に、おねじ外径の基準寸法がねじ太さを示す呼び径に使われます。
例)M20 = 「おねじの外径がø20のメートルねじ」
めねじ内径は、同じ呼び径のねじでもピッチにより内径寸法が異なります。
めねじ加工用の工具選定時は、めねじ内径(ねじ下穴径)を基に選定してください。
■基準寸法(呼び径)
■おねじ・めねじの径寸法詳細
2.4 テーパーの有無
ねじの種類によってはテーパーを持つものが存在します。テーパの有無で、以下のように大別できます。
平行ねじ(メートルねじ等):円筒面にらせん溝を持つ
テーパねじ:円すい面にらせん溝を持つ
下記に代表的なテーパーねじの種類と規定の勾配を示します。
ねじ規格 | ねじ表記 | テーパー | 勾配 |
管用テーパーねじ | R,Rc,PT(旧JIS) | 1/16 | 1.79° |
アメリカ管用ねじ | NPT,NPTF | 1/16 | 1.79° |
2.4.1 テーパーの表記方法
使用頻度の多いR(PT)ねじや,NPTのテーパーは1/16(勾配1.79°)です。
テーパーねじ加工前には各ねじで規定された勾配をご確認ください。
2.5 ねじの条数
通常のねじは1条ねじです。多条ねじは複数の溝を持ったねじです。1条ねじはねじ溝が1本ですが、2条、3条では各々2本、3本の溝が切られます。
※多条ねじの加工方法詳細はこちらから確認頂けます。
2.5.1 リード
ねじが1回転したときに進む距離をリードと言います。通常の1条ねじでは「リード = ピッチ」です。
多条ねじのリードは、1本の溝が1回転に進む距離であり、リードは2条ではピッチの2倍、3条ではピッチの3倍となります。
リードの計算方法:「リード」=「ピッチ」X「条数」
旋盤を使ったねじ切り固定サイクルでは、“F(mm/rev)” の値にリードを用います。
2.5.2 リード角
リード角は、ねじの円周とリードから求められる下図に示す勾配(傾斜角度)で定義されます。
リード角は内・外径ねじ切りバイトのリード角補正時に重要な指標です。
■リード角の計算方法
■リード角補正の必要性
ご購入時のホルダ(外径ねじ切りホルダの場合)にはリード角=1°の敷金が組み込まれています。
リード角が大きいねじではインサートの逃げ角が十分に保てなくなる場合があり、このような場合は敷金を交換する、もしくはリード角違いのバイトに変更する(内径ねじ切りホルダ)ことでリード角を補正する必要があります。
2.6 ねじ等級
ねじには要求される精度等級が存在します。図面指示をご確認の上、加工時の寸法調整と検査を実施ください。
2.6.1 ねじ等級で与えられる寸法精度
ねじの精度は、①おねじ外径・めねじ内径 ②ねじの有効径 それぞれ別個に精度(公差)が与えられる。
例1) 「①おねじ外径・めねじ内径」と「②ねじ有効径」の精度がともに等級で表されている場合
例2) 「①おねじ外径・めねじ内径」の精度が数値で「②ねじの有効径」の精度が等級で表記されている場合
例3)精度指示が省略されている場合
ねじの公差域が図面に未記載の場合は、おねじ6g、めねじ6Hを適用するのが一般的です。
注) 確かな精度等級指示は設計者にご確認ください。
2.6.2 ねじ等級の検査方法
ねじの精度検査には「おねじ外径(めねじ内径)」と「有効径」の2つの寸法検査が必要です。
■有効径の検査方法
ねじの有効径は、一般的な内・外径用の測定器を使用しての測定は不可能です。
有効径は、”通・止め検査ゲージ”を使用して検査を行います。※検査時は、図面指示のある等級のゲージをご使用ください
汎用的に用いる以下のねじゲージは、有効径を検査しています。
ねじゲージはおねじ外径・めねじ内径は検査していません。
有効径の検査方法
■おねじ外径・めねじ内径の検査方法
ねじの呼び径とピッチの組み合わせで、下表のように公差範囲が決まります。
この公差範囲を理解していれば、おねじ外径とめねじ内径はマイクロメータを使用した検査が可能です。
★加工時の精度出しのポイント
ねじ加工では、”おねじ外径(めねじ内径)”と”有効径”の2つの精度を満たす必要があります。
下記に代表的なねじの「おねじ外径・めねじ内径の寸法公差」と、「有効径の寸法公差」を示した表を記載します。
仕上げ加工時の切込み値設定の参考にご使用してください。
※特に、”おねじ外径/めねじ内径寸法”と”有効径”各々別個での寸法調整が行えないさらい刃つきインサート使用時の切込み量設定時に重要です。
代表的なおねじ外径と有効径の寸法表(6g相当)
メートル外径ねじ:6g | ||||||||
呼び径 | 具体例 | 適用公差 | ねじ寸法の許容範囲 | |||||
を超えて | 以下 | 呼び径 | ピッチ | 内径 | 有効径 | 外径
(マイクロメータで測定) |
有効径
(ねじゲージで測定) |
|
6H | 6H | Min – Max | Min – Max | |||||
11.2mm | 22.4mm | M12 | X | 1 | 0.026 ~ 0.180 | 0.026 ~ 0.118 | 11.794 ~ 11.974 | 11.206 ~ 11.324 |
M12 | X | 1.25 | 0.028 ~ 0.212 | 0.028 ~ 0.132 | 11.760 ~ 11.972 | 11.028 ~ 11.160 | ||
M12 | X | 1.5 | 0.032~ 0.236 | 0.032 ~ 0.140 | 11.732 ~ 11.968 | 10.854 ~ 10.994 | ||
M12 | X | 1.75 | 0.034 ~ 0.265 | 0.034 ~ 0.150 | 11.701 ~ 11.966 | 10.679 ~ 10.829 | ||
M22 | X | 2 | 0.038 ~ 0.280 | 0.038 ~ 0.160 | 21.682 ~ 21.962 | 20.503 ~ 20.663 | ||
M20 | X | 2.5 | 0.042 ~ 0.335 | 0.042 ~ 0.170 | 19.623 ~ 19.958 | 18.164 ~ 18.334 | ||
22.4mm | 45mm | M30 | X | 1 | 0.026 ~ 0.180 | 0.026 ~ 0.125 | 29.794 ~ 29.974 | 29.199 ~ 29.324 |
M24 | X | 1.5 | 0.032 ~ 0.236 | 0.032 ~ 0.150 | 23.732 ~ 23.968 | 22.844 ~ 22.994 | ||
M30 | X | 2 | 0.038 ~ 0.280 | 0.038 ~ 0.170 | 29.682 ~ 29.962 | 28.493 ~ 28.663 | ||
M30 | X | 3 | 0.048 ~ 0.375 | 0.048 ~ 0.200 | 29.577 ~ 29.952 | 27.803 ~ 28.003 | ||
M30 | X | 3.5 | 0.053 ~ 0.425 | 0.053 ~ 0.212 | 29.522 ~ 29.947 | 27.462 ~ 27.674 | ||
M45 | X | 4 | 0.060 ~ 0.475 | 0.060 ~ 0.224 | 44.465 ~ 44.940 | 42.118 ~ 42.342 | ||
M45 | X | 4.5 | 0.063 ~ 0.500 | 0.063 ~ 0.236 | 44.437 ~ 44.937 | 41.778 ~ 42.014 |
代表的なめねじ内径と有効径の寸法表(6H相当)
メートル内径ねじ:6H | ||||||||
呼び径 | 具体例 | 適用公差 | ねじ寸法の許容範囲 | |||||
を超えて | 以下 | 呼び径 | ピッチ | 内径 | 有効径 | 内径
(マイクロメータで測定) |
有効径
(ねじゲージで測定) |
|
6H | 6H | Min – Max | Min – Max | |||||
11.2mm | 22.4mm | M12 | X | 1 | 0.236 ~ 0 | 0.160 ~ 0 | 10.917 ~ 11.153 | 11.350 ~ 11.510 |
M12 | X | 1.25 | 0.265 ~ 0 | 0.180 ~ 0 | 10.647 ~ 10.912 | 11.188 ~ 11.368 | ||
M14 | X | 1.5 | 0.300 ~ 0 | 0.190 ~ 0 | 12.376 ~ 12.676 | 13.026 ~ 13.216 | ||
M12 | X | 1.75 | 0.335 ~ 0 | 0.200 ~ 0 | 10.106 ~ 10.441 | 10.863 ~ 11.063 | ||
M14 | X | 2 | 0.375 ~ 0 | 0.212 ~ 0 | 11.835 ~ 12.210 | 12.701 ~ 12.913 | ||
M22 | X | 2.5 | 0.450 ~ 0 | 0.224 ~ 0 | 19.294 ~ 19.744 | 20.376 ~ 20.600 | ||
22.4mm | 45mm | M23 | X | 1 | 0.236 ~ 0 | 0.170 ~ 0 | 21.197 ~22.153 | 22.350 ~ 22.520 |
M25 | X | 1.5 | 0.300 ~ 0 | 0.200 ~ 0 | 23.376 ~ 23.676 | 24.026 ~ 24.226 | ||
M36 | X | 2 | 0.375 ~ 0 | 0.224 ~ 0 | 33.835 ~ 34.210 | 34.701 ~ 34.925 | ||
M27 | X | 3 | 0.500 ~ 0 | 0.265 ~ 0 | 23.752 ~24.252 | 25.051 ~ 25.316 | ||
M30 | X | 3.5 | 0.560 ~ 0 | 0.280 ~ 0 | 26.211 ~ 26.771 | 27.727 ~ 28.007 | ||
M36 | X | 4 | 0.600 ~ 0 | 0.300 ~ 0 | 31.670 ~ 32.270 | 33.402 ~ 33.702 | ||
M42 | X | 4.5 | 0.670 ~ 0 | 0.315 ~ 0 | 37.129 ~ 37.799 | 39.077 ~ 39.392 |
2.6.3 ねじの等級と使用するインサート
ねじの等級により、使用するインサートに適・不適が存在します。
詳しくは「さらい刃付き・普通刃(さらい刃無し)のインサート使い分け~ねじの山高」を参照ください。
3. ねじの表し方
3.1 ピッチをmmで表すねじの場合 代表例:ISOメートルねじ
表記方法:「ねじの種類を表す記号」「ねじの呼び径を表す数字」X「ピッチ」「有効径の公差域クラス」「おねじ外径の公差域クラス」
例1) M12X1.5
M:ねじの種類を表す記号
12:ねじの呼び径を表す数字
1.5:ピッチ
例2) M24X1.5-6g6g
M:ねじの種類を表す記号
24:ねじの呼び径を表す数字
1.5:ピッチ
6g:有効径の公差域クラス
6g:おねじ外径の公差域クラス
※ピッチを省略して表記される場合は、並目ねじを示すのが一般的です。
※『内径加工用工具の選定表』内に各種ピッチの記載がありますのでご活用ください
3.2 ユニファイねじの場合
表記方法:「ねじの直径を表す数字」-「山数」「ねじの種類を表す記号」-「ねじの公差域分類」
例1) 3/4 -16UNF
ねじの直径を表す数字:3/4インチ
山数:16
ねじの種類を表す記号:UNF
例2) 3/4 -16UNF-2B
ねじの直径を表す数字:3/4インチ
山数:16
ねじの種類を表す記号:UNF
ねじの公差域分類:2B
3.3 ピッチを山数で表すねじの場合 代表例:管用平行ねじ
表記方法:「ねじの種類を表す記号」「ねじの直径を表す数字」ー「山数」
例) G1/2
ねじの種類を表す記号:G
ねじの直径を表す数字:1/2インチ
※ただし同一直径に対し、山数がただ1つに規定されているねじでは、一般には山数を省略する(G 1/2の山数は14)