いまさら聞けない!? 旋削加工のキホン 外径バイトの性能を左右する切込み角とは

本記事のポイント
  • 外径旋削バイトの選定や使い方で重要な基礎が分かる
  • 切り込み角が切削特性に与える影響が分かる
  • 切り込み角の大小によりメリット・デメリットが分かる
  • 切り込み角の特性を理解することで生産性の高い加工が実施できる

外径バイトの種類

外径旋削バイトには用途によって様々なバイトが用意されています。
これらバイトの種類は、JISで定義された刃型形状記号で定義づけされています。
よく皆様がお使いになられているバイトは、「外径・端面旋削で使用されるL刃型」や「倣い加工も対応可能なJ刃型」が一般的ではないでしょうか。
様々な種類のバイトがありますが、これらバイトの間で何が違うかというと、それは、「切込み角」が異なります。

切込み角(切れ刃形状)とは

切込み角とは、”ワーク外径と切れ刃からなる角”で定義づけられます。
切込み角はバイトの切削特性を左右する重要なファクターになりますので是非覚えておいてください。

切込み角が切削特性に与える影響 その1 切り取り厚さ

切込み角が切削特性に与える影響の1つとして、切り取り厚さがあげられます。切り取り厚さとは、送りに対する切れ刃直行方向の幅と定義されます。

切込み角が90°の場合、送り(f)と切り取り厚さ(h0)は等しくなります。
切込み角が45°の場合、送り(f)に対し、切り取り厚さ(h1)は0.7倍になります。

つまり切込み角が小さくなることで、同じ送りを適用しても、切込み角が小さいバイトの方が切り取り厚さが薄くなるため、切れ刃にかかる負担が小さくなります。
その結果、切込み角が小さい工具はより高い送りの適用が可能になります。

切込み角が切削特性に与える影響 その2 切削力の向き

切込み角が切削特性に与える影響のもう1つとして、切削力の向きがあげられます。
切込み角は切削力の3分力のなかでも、「送り分力」と「背分力」に影響を与えます。
送り分力とは、被削材の軸方向へ押す力です
背分力とは、被削材の径方向へ押す力です。

切込み角が変わることで、この送り分力と背分力の配分が変わります
切込み角が90°の場合、背分力が小さく、それに対し送り分力が大きくなります
切込み角が45°の場合、送り分力と背分力の比がほぼ1対1の関係になります

結論として、切込み角を小さくするにつれ、送り分力は小さく、背分力は大きくなる傾向があります。

切込み角大・小のメリット・デメリット

切込み角が大きいバイト(90°)
メリット:背分力が小さいことから長細いワーク(剛性の低い)ワークの加工に適する
デメリット:送りはそれほど上げられない

切込み角が小さいバイト(45°以下)
メリット:高送りの適応による高能率が可能
切れ刃にかかる切削負荷が小さいため工具寿命が延長する傾向がある

デメリット:背分力が大きいため、低剛性なワーク(長細いワークや片持ちのワークなど)の加工は苦手
切込みが小さくなる

切込み角(切れ刃形状)による切削特性のまとめとユースケース

前述のように切込み角は切削特性に大きな変化を与える重要なパラメータです。
実際のユースケースを考えた場合の切込み角の大きな工具と小さな工具の特性をまとめた図を示します。
切込み角の大小には、メリット・デメリットがありますので、その特性を理解した上で、加工状況に応じて工具を使いわけることが重要です。

2つの切込み角を持った新旋削工具AddMultiTurn

前述のように各種バイトにはその切込み角特有のメリット・デメリットが存在します。
タンガロイから発売した新旋削工具AddMultiTurnは、切込み角が小さな刃と大きな刃を合体させた新コンセプトの工具です。
切込み角の大きな刃は前挽きで、切り込み角の小さな刃は後挽きと、バイトの送り方向を変えることで、切込み角を使い分けることの出来る工具です。
切込み角の特性を理解し、使用状況に応じて適切な切れ刃を使い分けることで、1本のバイトで大きな生産性の改善が可能です。

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