これは、タンガロイの営業担当がお客様とともに歩んだ成功への道である。
タンガロイ営業担当
岩田 健二朗Kenjiro Iwata
- 出身
- 兵庫県
- 社歴
- 2019年入社
- 趣味
- ゴルフ・釣り
エンドミルによる肩削り加工、特に長突き出し状態での加工はびびりの発生は顕著で、多くの加工ユーザーを悩ます問題である。今回はそんな長突き出しのエンドミル加工での課題を解決したストーリーである。
愛知県犬山市に拠点を構える株式会社近藤鉄工所様は、創業以来６３年にわたり、工作機械や建設機械部品、専用設備の部品、治具部品など、幅広い分野の機械部品の加工を手掛けてきた。特に中物の旋盤やマシニング、ターニングセンターや横マシニングを一つの工場に集約し、コストや納期、輸送費などの製品管理面でお客様に高い評価を受けている。
近藤鉄工所様は、低コストと短納期に対応するため、「一業者一貫加工」を実践し、業者間を跨がないことで納期の短縮を実現している。また、ミドルサイズの部品加工に特化し、複合加工機や5軸加工機を保有してワンチャッキングでの多面加工を可能にすることで、お客様の多様なニーズに応えている。
また近藤鉄工所様では、環境対策にも積極的で、SDGs実践計画やエコアクション21取得に向けた活動など、積極的に環境問題の解決に取り組んでいる。全社の使用エネルギーの内、13％は太陽光発電で賄い、残りはCO2フリーメニューの電力を購入して実質的に二酸化炭素排出量がゼロの電力を使用するなど、環境負荷低減に積極的に取り組まれている。
SDGsの取組
CO2フリー電源の利用
屋上に施設されたソーラーパネル
旋削加工と言えばタンガロイ
担当営業である岩田と近藤鉄工所 近藤工場長との出会いは2022年であった。近藤工場長は、旋削加工に関しては長年タンガロイが第一選択と、旋削インサートを中心にタンガロイ製品をご愛顧頂いてきた。
現在の担当営業である岩田とは、特約店である新栄商会様との同行の際に担当変更のご挨拶に伺ってからの関係である。その後は新栄商会 山口主任と共に定期訪問の中で、改善内容のヒアリングを行いながら、旋盤の加工改善、特に溝入れやねじ切りなどの改善を継続的に行いながら関係性を深めていった。
複合加工機でのエンドミル加工での課題
近藤鉄工所様では、工作機械や産業機械の仕事が多く、これら産業向けのシャフトやフランジ部品を複合加工機にて加工している。こういったシャフト部品では、円筒部に長穴やボルト座の座繰りを行う加工が多く、加工にはスクエアエンドミルや肩削りカッタを使用して加工を行ってきた。
「当社では、丸物の加工には積極的に複合加工機を導入し、ワンチャッキングでの多面加工を行うことで工程集約を推進しています。シャフト系のワークでは、ボルト座面やキー溝を加工するのにシャフト円筒部に対して、エンドミルによる溝加工、肩削り加工、ヘリカル加工を行うケースが多いです。
そういったエンドミル加工では複合加工機のミル軸でのアプローチとワーク干渉の関係から、ツーリングの突出しが長くならざるを得ない状況が多いです。
突出し長が長いことから、エンドミル加工はびびりが発生しやすく、そのため切込みを抑えた加工になり、加工時間が長くなっていました。」
と、複合加工機でのツーリングならではの課題があった。
MECT2023での課題解決策との出会い
長年の課題の中、近藤工場長は様々なメーカーのエンドミルをテストし、その中でより良いエンドミルを採用してきたが、十分に満足できる性能を持ったエンドミルを見つけるまでには至っていなかった。そんな折、2023年のMECTに参加した際にタンガロイブースで課題解決になりそうなヒントを得た。
「MECTでタンガロイさんのブースを見学した際に面白そうなエンドミルを見つけました。以前はタンガロイさんのエンドミルにはあまり強い印象がありませんでしたが、このエンドミルの独特な製品特長は効果を期待できそうな予感がしました。切れ刃形状が複雑なため、工具単価は高そうな印象はありましたが、一度テストをしてまずは性能を確かめるためにサンプル品の支給を岩田さんに依頼しました」
びびりにくいエンドミル FinishMeister
FinishMeisterはラフィング刃と仕上げ刃という２つの切れ刃を持った独自のコンビネーション刃型を有すスクエアエンドミルである。ラフィング刃による切削抵抗の低減とびびり発生の原因となる共振を抑制する振動周期のずれを生み出すため、通常のスクエアエンドミルよりも高いびびり抑制効果がある。また、仕上げ刃はラフィング刃よりも外側に飛び出しているため、この仕上げ刃が壁面の仕上げを担い、通常のスクエアエンドミルと同等の加工面粗さや品位が得られることを特長としたエンドミルである。
加工時間短縮と工具集約に成功
サンプルを受領後、さっそくテストを実施した。テストは被削材S45Cに対し、FinishMeisterのø12のエンドミルで加工を行った。まずはテストカットとして、FinishMeisterの最大刃長の切込みを掛けながら、徐々にびびりが発生しない切込みapと送り量を探索していった。
その結果最適な加工条件を見つけ、切削速度Vc=100m/min 回転当たりf=0.26mm/rev(fz=0.065mm/rev) 切込み量ap=7 – 8㎜ 切削幅ae=12㎜という条件で、びびりなく加工が行えた。
「FinishMeisterの高いびびり抑制効果は、びびりが発生しやすい長突き出しでのエンドミル加工で大きく効果を発揮しています。従来は何パスも要していた加工に対し、切込み回数の低減により加工時間が短縮できた点は効果が大きいです。
また、様々な部品があることから、エンドミルの突出し長は長めに設定し、工具長変更の手間を減らしたい意向がありました。FinishMeisterの高いびびり抑制効果により、突出し長が長い状態でも、びびりが抑制できる切削条件の寛容性の広さも魅力的に感じています。
びびり抑制効果だけでなく、仕上げにも使える点も大きな魅力です。従来は荒加工と仕上げ加工で使用するエンドミルを分けていましたが、FinishMeisterは荒加工も仕上げ加工も１本で行えるため、長穴や座繰り加工などの高い面品位が不要な加工ではFinishMeister一本で仕上げ加工まで行っています。工具集約を行えた点も評価をしています。」
と、加工時間の短縮に加え、工具集約も行えた大きな改善効果が得られた。
今回の改善ポイント
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高いびびり抑制効果で加工時間を短縮
FinishMeisterの高いびびり抑制効果により長突き出しが必要なエンドミル加工でもびびりの発生を抑制。従来よりも高切込みが行えるようになり加工時間短縮に成功
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ラフィング刃を持ちながら仕上げまで使えるエンドミル
仕上げ刃がせり出した独自のコンビネーション刃型を持つFinishMeisterは仕上げにも対応可能。荒加工と仕上げ加工を集約することにより、工具集約が可能になる
実現したい未来
近藤鉄工所様では、今回の改善にとどまらず更なる改善活動に取り組まれている。
「加工現場では失敗を恐れて安全マージンを取りすぎた条件や昔からの工具や工法を継続しがちです。
従業員にはどんどん新しい工具・工法にチャレンジして貰いたいと思っています。
そういったチャレンジを従業員に促すのにある程度の失敗は上長が許すことで、従業員がチャレンジしやすい環境作りを心掛けています。」
「当社ではSDGs実践計画やエコアクション21取得に向けた活動など、積極的に環境問題の解決に取り組んでいます。製造業＝環境に悪いというイメージを払拭したい意図がありました。
モノづくりの世界に新たな価値観の軸を持たせ、ただ物を製造するだけでなく、環境改善を目指す産業の部品製造や、今回のような新しい工法による環境負荷削減など、製造業ならではのアプローチでこの問題に取り組んでいこうと考えています。循環型社会の達成を目指せる会社作りの活動を今後も推し進めていきたいと思います。」
「FinishMeisterは個人としても特徴的な面白い工具と感じていましたので、今回の案件が上手くいって私も嬉しく思っています。
営業活動をする中で意識していることは、単純にお客様が求められる工具をご紹介するのはではなく、お客様とのヒアリングの中でお客様が抱える真の課題を理解することが大事だと思っています。問題を把握・理解することで、問題解決に繋がる提案を行うことを日々心掛けています。担当させて頂いたユーザー様が、よりタンガロイのファンになって頂ける様営業に取り組んでいます。」
と、今回の案件を振り返っている。
タンガロイとしてもお客様の抱える課題を理解して、課題解決ならびにお客様が抱く理想の達成に向けて伴走していきたい。
今回ご紹介した製品はこちら
優れた切削性能を発揮する超高性能エンドミル
FinishMeister（フィニッシュ・マイスター）
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