機械器具・設備

加工工程の検討から
工具選定まで一手に
工具基軸のソリューション提案

(株)タンガロイ ツーリング設計グループ

ツーリング設計部のメンバー

※本記事は月刊生産財マーケティング2024年6月号掲載分をWeb用に再編集したものです。

タンガロイは主に超硬工具を製造、販売する切削工具メーカーだ。近年は単に製品を販売するだけではなく、工具を基軸としたソリューションの提案にも注力している。その中核となる部隊が「ツーリング設計グループ」だ。加工工程の検討や最適な工具選定などのサポートを一手に担い、顧客の生産性向上に貢献する。2017年に発足して以来、顧客からの問い合わせの件数は右肩上がりで増加しているという。

使い方もセットで

タンガロイのツーリング設計グループは顧客から支給されたワークの図面に対し、最適な加工工程の検討から工具やツーリングの選定、切削条件、加工時間の算出まで含めたソリューションを一気通貫で提供する。

サイクルタイムの短縮や工具寿命の延長、環境対応など、顧客が抱える工具関連のニーズはさまざまだ。また、対象ワークを加工するのに使用する工作機械も顧客ごとに異なる。そのため、ツーリング設計グループではこうした要望やワークの形状に合わせ、加工の一部に特殊工具を採用して工程集約を図ったり、入手性を考慮して標準工具だけでレイアウトを組んだりと、工具を基軸とした工具メーカーならではのソリューションを提案する。

また、福島県いわき市のいわき工場や愛知県日進市の名古屋工場にある「テックセンター」を活用し、選定した工具や算出した切削条件が妥当かどうかを検証できる体制も特徴だ。黒川正寛氏は「単に製品を販売するだけではなく、その使い方もセットで提案することで、お客さまの生産性向上に貢献したい」と語る。

ツーリング設計グループに舞い込む依頼は、新規ワークの加工方法の相談や既存ワークの加工方法の改善要望など多岐にわたる。中には、200~300もの加工工程があって100本以上の工具を使うワークに対応した事例もあるという。

顧客は工具費を負担するだけで、それ以外の加工工程の検討や切削条件の算出といったサポートは全て無償で受けられる。

タンガロイ 技術本部工具設計部ツーリング設計グループ課長 黒川正寛氏
技術本部工具設計部ツーリング設計グループ課長
黒川正寛

多彩なバックグラウンド

ツーリング設計グループは本社工場と名古屋工場にそれぞれ設計者を配置しており、原則的には1つのワークにつき1人が担当する形で国内外の顧客に対応する。

複雑形状のワークや難削材の加工に挑戦する顧客をサポートするには、工具やツーリング、加工技術などに関する高度な知識が欠かせない。

それだけに、ツーリング設計グループは一定以上のキャリアや経験を積んだメンバーで構成されている。全員に共通するのは3DCADソフトウエアが使えること。その上で、製造や設計などの各分野のスペシャリストをそろえたという。

製造部門で工具作りに長年携わってきたメンバーや、設計部門でソリッドドリルやエンドミルを設計してきたメンバー、顧客の製造現場を熟知したメンバーなど、多彩なバックグラウンドを持つ技術者がそれぞれの専門性を生かし、顧客をきめ細かくサポートしている。

ツーリング設計グループのメンバー
ツーリング設計グループのメンバー(左から2番目が黒川正寛氏、写真は名古屋工場で撮影)

いかに技術者を育成するか

同社がツーリング設計グループの前身であるツーリングチームを発足したのは17年。当初は複雑形状のワークの加工が多い航空宇宙産業などが主なターゲットだった。

だが、セミナーによる情報発信や、最新工具を特別価格で購入できる「新規ツーリングプロモーション」の施策などが奏功し、問い合わせの件数は年を追うごとに右肩上がりで増加。現在は業種や企業規模、使用する設備を問わず、あらゆる顧客から要望を受けている。問い合わせの件数は昨年から急増し、1.5倍のペースで増加している。近年は海外企業からの加工相談や、一度利用した顧客からのリピートも増加傾向にある。

複雑形状のワークや難削材の加工ニーズの拡大に伴い、ツーリング設計グループの重要性はこれからますます高まるだろう。黒川氏は「より多くのお客さまの要望に対応するためにも、いかに技術者を育成し、組織を大きくしていくかが今後の課題だ」と述べる。

ワークに応じた最適な工具選定
顧客の要望やワークの形状に合わせて最適な工具を選定する(写真は左右ともイメージ)

万全のセキュリティー

技術本部 工具設計部 ツーリング設計グループ 課長 黒川正寛

航空宇宙産業などのお客さまに向け、工具を基軸としたトータルソリューションを提案する部隊として「ツーリングチーム」が17年に発足しました。初期メンバーは私を含め2人だけで、「やってやるか」と前向きな気持ちで拝命しました。その後も継続的に人員を増強し、今年4月には現在の「ツーリング設計グループ」へと組織改定しました。

高難度な加工に挑戦するお客さまに対してソリューションを一から考え、提案し、その妥当性を実際の加工を通じて検証できるのは大きなやりがいです。

もちろんセキュリティー対策も万全です。お客さまから支給された図面は専用サーバーに格納されており、特別なアクセス権で管理されています。

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