- 旋盤におけるドリル加工時の芯高管理の重要性
- 芯高管理が不適切であった場合に生じる不具合事象
- ドリル芯高の確認方法
- ドリル芯高の調整方法
- 旋盤加工におけるドリル加工時の芯高管理の重要性
- 旋盤でのドリル取付け方法
- 刃先交換式ドリルの芯高設計
- 芯高管理が不適切であった場合に生じる不具合事象
- ドリル芯高の確認方法
- 試加工による確認方法
- 基準棒を用いた確認方法
- 芯高の調整方法
- タレット位置の変更
- ドリルの上下反転
- 偏心スリーブの使用
旋盤加工におけるドリル加工時の芯高管理の重要性
刃先交換式ドリルを旋盤で使用するケースは多いと思います。
旋盤において刃先交換式ドリルを使用する際に最も大事な事は芯高の管理です。
芯高が適切でない状態だと、「加工中に振動する」「穴径が出ない」「すぐにインサートが欠ける」など多くのトラブルが発生します。
お客様から相談のある旋盤でのドリル加工のトラブルの多くは芯高不良に起因するものが多いことも事実です。
本記事では、刃先交換式ドリルを旋盤で使用する際のポイント「芯高管理」に関して解説します。
旋盤でのドリル取付け方法
旋盤にドリルを取付ける際は、タレットに内径加工用の治具取付け、治具内径とドリルのシャンク径に合うスリーブを介してドリルを装着する場合が多いです。
ドリルのコッタ面はドリルの切れ刃に平行な位相で設けられており、コッタ面をボルトで固定すると切れ刃と旋盤のX軸が平行に取付けられます。
またコッタ面を上側に向けた状態で取付けると、外周刃が上を向き、中心刃が下を向くような位相でドリルのコッタは設計されています。
(※連続状の切りくずが発生する中心刃側を下に向けることで、中心刃の切りくず排出性を高めたいため)
刃先交換式ドリルの芯高設計
刃先交換式ドリルの設計は、正しい取付けがされていれば(ドリル中心とワーク中心が一致)中心刃の切れ刃がワーク中心に対し、0.25程芯下がりになるように設計されています。
中心刃が芯下がりになっていること刃先交換式ドリルが有効に機能するのに重要な要素になります。
中心刃が芯下がりになっていることから、穴底にコアが生成され、コアの直径がø0.5程度であれば正しい取付けがされている証拠と判断できます。
芯高管理が不適切であった場合に生じる不具合事象
芯高が適切でない状態だと、「加工中に振動する」「穴径が出ない」「すぐにインサートが欠ける」など多くのトラブルが発生します。
芯が高い状態ですと、2番当たりと呼ばれる逃げ面と被削材の干渉が発生、「加工中の振動」や「インサートの欠損」が生じます。
中心刃は芯下がりであることが重要ですが、芯下がり量が大きすぎても不具合が発生します。芯下がり量が大き過ぎると、穴底に生成されるコアの径も大きくなります。
ø1mm以上のコアになると、ドリル加工中にコアを折るのに必要な力が過大になり、インサートのすくい面が欠ける現象が生じます。
適切な中心刃芯高の目安としては、-0.3~0内で芯下がり量を管理することが重要です。
上記で示すように中心刃インサートの損傷状態により、芯高の状態を類推できます。普段使用しているインサートを見て芯高の類推を行うことも一手です。
芯上がりの時の損傷:中心刃インサートの逃げ面が欠損
芯下がり量が大き過ぎる時の損傷:中心刃インサートのすくい面が欠損
ドリル芯高の確認方法
上述のとおり芯高の管理が重要です。ここでは芯高の確認方法を解説します。
試加工による確認方法
最も簡単・確実なおすすめな方法です。
実際に穴深さ5~10mmの加工を行って頂き、穴底に発生するコアの大きさを確認することで芯高の確認が行えます。
穴深さ10mmかつf=0.1mm/rev程度の低送り条件であれば、芯高が不適切な場合でもインサートの損傷やボディの破損を防げますので、この試加工で芯高の確認をお願いします。
(※コアが折れた瞬間の場合も考えられるため、コアが無い場合は数mmずつ何穴か加工頂き、コアが残るところでコア径をご確認ください。)
基準棒を用いた確認方法
ドリルだけでなく、内径ボーリングバイトの芯高確認にも使える確認方法です。
基準棒とダイアルゲージを使用して、基準棒の外径の振れを測定することで芯高の確認が行えます。
基準棒として内径ボーリングバイトを代用頂くことも可能です。
ドリル芯高の調整方法
タレット位置の変更
芯高を僅かに変えたいときにおすすめな方法です。
各タレット位置で固有の芯高が存在する場合があるため、タレット位置を変えることで芯高が変わる可能性があります。
ドリルの位相上下反転
中心刃が芯上がりの状態は、逃げ面が干渉するため一番避けたい状態です。
この際はドリルの位相を上限反転することで、芯下がりの状態を作ることができます。
ただし芯ずれ量が大きすぎる場合は反対に芯下がり量が大き過ぎる状態にもなりかねないため、反転後に芯高量の確認をお願いします。
偏心スリーブの使用
芯高の調整方法として最もおすすめな方法です。
別売りの偏心スリーブをご使用頂くことで、芯高の調整が行えます。
偏心スリーブの位相を変えて頂くことで、芯高が変化し、適切な芯高の管理が可能です。
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