これは、タンガロイの営業担当がお客様とともに歩んだ成功への道である。
深穴加工用刃先交換式ドリルで、加工時間が1/10に!
取材協力
宮腰精機株式会社
タンガロイ営業担当
下村 隆司Shimomura Takashi
- 出身
- 神奈川県
- 社歴
- 新卒入社28年目 総務からキャリアをスタートし、いわき工場を経て現在は東部支店 東北営業所にて営業活動を行っている。
- 趣味など
- 少年野球の指導をすること
深穴加工用刃先交換式ドリル『DeepTriDrill(ディープ・トライ・ドリル)』発売開始
仙台に異動してきて、早10年。
今回の主役である宮腰精機株式会社刈和野工場とは、そのころからのお付き合いになる。
宮腰精機株式会社刈和野工場は、株式会社ミヤコシグループの生産拠点である秋田県大仙市刈和野に位置し、商業用印刷機部品等を生産している。これまで、T9200シリーズや溝入れ工具など旋盤加工で使用する工具をご愛顧いただいてきた。
今回の話は、2年ほど前に発売になった深穴加工用刃先交換式ドリル『DeepTriDrill』の発売日までさかのぼる。
以前から印刷機部品の深穴加工における能率アップについて相談をいただいていた。
使用しているろう付けガンドリルでは切りくず処理がうまくいかず、また寿命も短いと感じていたようだが、当時はお客様の課題に寄り添える工具がなかったため苦い思いをしてきた。
そんなタイミングで発売になったのが、『DeepTriDrill』である。
この製品の大きなポイントは、圧倒的な加工能率の高さと管理の単純さにある。
独自に設計されたチップブレーカとチップスプリッタにより、優れた切りくず処理を実現できる。ろう付けガンドリルと比べ、送りは4倍、切削速度は1.7倍ほど上げることができる優れものなのだ。
もちろん刃先交換式のメリットもある。
宮腰精機株式会社は以前から、再研削品の発注管理についても課題意識を持っていた。何本の工具を再研削に出しているか、納期はいつか、新規購入の必要があるかどうかなど、予備工具を含め細かに管理しなければならなかったからだ。
さらにガンドリルは、その長さゆえ輸送時の手間も大きくのしかかる。
その点、『DeepTriDrill』はシンプルだ。
寿命がきたら刃先を交換するだけ。慣れた方であれば約1分/本で完了できる。再研削品を使用する際ネックとなる「低い寿命に合わせる」問題も、すべてが新品になる『DeepTriDrill』は無関係である。
加工時間が1/10に
提案後、すぐにテストカットの運びとなった。
宮腰精機株式会社が使用している工具径(φ26mm)とシャンク長さは標準設定がなかった為、少し長めにて、試していただくことにした。
今回の改善ポイント
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加工時間が1/10に短縮
『DeepTriDrill』の圧倒的な性能の高さで、大幅な改善となった
使用機械:Mazak INTEGREX e-670HⅡ
被削材:S45C
切削条件:Vc=106 S=1300 f=0.13 30秒/穴
※ろう付けガンドリル使用時は、Vc=45 S=550 f=0.03 5分43秒/穴であった -
工具交換時間と再研削時間の短縮
これまでは5分/本かかっていた工具交換が短縮され、浮いた時間を加工にあてられるようになった。また一部社内で行っていた再研削作業もなくなり、機械稼働時間が増えた
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管理の簡略化
再研削に出している間に使用する予備工具の購入の必要がなくなり、管理も楽になった
これはわずか3か月での出来事である。この改善には、宮腰精機株式会社の奥山工場長も大変喜んでくださった。宮腰亨社長の耳にも入ったことで、改善事例として大きく取り上げていただけた。
タンガロイ = 旋盤というこれまでのイメージに、穴あけ加工が加わった瞬間である。
宮腰精機株式会社では、他にも多くのラインでろう付けガンドリルや超硬ドリルを使用されている。そのため、今回の『DeepTriDrill』に加え、φ6mmからのラインナップと5種類のヘッドバリエーションで好評を得ているヘッド交換式ドリル『DrillMeister(ドリル・マイスター)』もおすすめしているところである。
お客様の課題を解決できる瞬間がなによりのやりがい
私は根っからの性分なのか、誰かの役に立つことに喜びを感じるタイプである。加工のプロであるお客様でも、日々様々な加工に忙しく取り組んでいる状況では、目の前の課題に気づくことができないことも多い。
現場を見て回ったり、会話を通して改善点を見つけ出す。それに寄り沿いながら、1つずつ丁寧に提案を行う。
これからも、自分なりの営業スタイルで、加工改善に取り組んでいきたい。