価格と性能を両立せよ!新興国向けブレーキパッドの開発秘話
Project Story
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価格と性能を両立せよ!
新興国向けブレーキパッドの開発秘話

Members

  • M・Kさん

    製品事業本部 摩擦材料部 摩材開発グループ

    2005年入社 / 材料工学専攻 M・Kさん

    入社後、オートバイで使われるブレーキパッドの開発や、海外工場での工程変更などに開発面から携わる。お客様ごとにカスタマイズしながら製造するブレーキパッドは、密なコミュニケーションが欠かせない。お客様の設計や実車評価担当者と議論を重ねながら新しいものを生み出す開発業務にやりがいを感じる。

  • D・Kさん

    製品事業本部 韮崎工場摩材製造課

    2008年入社 / 材料工学専攻 D・Kさん

    入社後は材料開発部に配属となり、クラッチプレートの開発等に携わる。2015年から生産技術部門に異動し、自動化に伴う設置、導入等に従事。機械が実際に使われる場面や全体の工程、製品の仕様までを考え、機械メーカの担当者と共に細かな調整等を行う。機械が手放しで動ける状態になった時に、達成感を感じる。

  • Y・Kさん

    製品事業本部 摩擦材料部摩材開発グループ

    2008年入社 / 材料工学専攻 Y・Kさん

    入社後、開発グループに配属されるが、リーマンショックのタイミングと重なり、原料の供給リスク等が発生。品質評価をメインに携わる。その後、環境負荷物質を出来るだけ減らすため、環境に配慮したサスティナブルな原料を主とした材料開発を行い、2017年からは設計業務に従事。たくさんの案件に携わるので、後工程に支障がでないよう1つ1つバランスよく対応するようにしている。

※所属部署・役職・インタビュー内容は取材時点でのものです

新興国向けブレーキパッドの開発がスタート

タンガロイでは、金属を削る切削工具のほかに、二輪車や四輪バギー向け焼結ブレーキパッドを製造・販売している。ブレーキパッドは、車両の運動を制御する重要保安部品の一つであり、その品質の高さからタンガロイ製品は、国内外でトップクラスのシェアを誇る。

タンガロイのブレーキパッドの強みは、制動力の高さとカスタマイズ力にある。ブレーキパッドは、カタログに掲載されている製品とは違いお客様のニーズに合わせ一つずつカスタマイズしていく必要がある。そのため、30年以上蓄積してきた研究結果やお客様からの膨大なフィードバックは何にも勝る財産であり、タンガロイ製品の品質を支える要なのである。

このプロジェクトのはじまりは、主要取引先である二輪車メーカから頂いた新興国向けブレーキパッド開発の要望である。希望売価は、北米、欧州向けの6割程度であり、性能と価格のバランスをいかにとるかが今回のプロジェクトのポイントとなった。

このプロジェクトのリーダーに抜擢された摩擦材料部摩材開発グループのM・Kがまず取り掛かったのが、材料開発である。一般的にブレーキパッドの中には20種類程度の成分が含まれており、どの原料をどの割合で混ぜ合わせるかで性能が決まる。開発の腕の見せ所ではあるが、今回の場合かなり難度が高かったという。

「価格面だけを考えれば、素原料には安価な金属粉が適しますが、これでは十分な摩擦性能が出ないのです。」とM・Kは言う。

プロジェクトについて話す チームメンバー

価格と性能を両立せよ!

そこで、まずは価格を抑えつつ性能を満たすことのできそうな素材を用意し、ふるい分けをした。そして、細かくテスト、評価していくことにしたのだ。30程度のサンプルが出そろった後は、雨の中、泥水の中、二人乗りを想定した急ブレーキなど様々な条件のもと、時速100kmや200km程度で性能を確認し、さらに候補を絞りデータ取りをした。結果的に100回以上のテストを行った。

同様に製造工程も価格に影響する要素である。生産技術のD・Kが中心となり、焼結温度の見直し等を通し、出来る限り価格を抑えられるよう工夫した。

3か月後。
価格と性能のバランスの良い3つの候補についてデータをまとめ、お客様に提出した。お客様の実走評価では、ブレーキだけでなく車両全体の評価も平行して行うため、3種類程度の提案が限度である。2~3回程度のフィードバックを経て、1か月半後に採用の通知をいただいた。

材料開発と同時期に、最終製品の図面作成作業も必要である。設計のY・Kが中心となり、まずはお客様の要望を理解し、その上で部品供給メーカ、製造担当と生産工程を踏まえて調整を行った。そして最終的に全ての要望を含んだ製品図面を作成し、製造部門へバトンを渡したのだ。

材料・図面が決まっても、それで終わりではない。試作ラインで行っていた製造を、量産ラインに移管する工程が残っている。生産技術のD・Kが中心となり、大量生産でも同様の性能を出せるように慎重に検証した。それから3か月半後、全ての準備が完了しようやく製品化にこぎつけたのである。

その後も改良を重ねつつ、発売から6年が経過。今では、新興国向けの焼結ブレーキパッドの売り上げは発売開始時の18倍となり、タンガロイの主力製品の一つへと成長したのだ。

ブレーキパッド製品